長興寺

物事の意味というのは、時代につれて変化する。
なかでも、昔は完全に宗教上のものだったが、現在では全く宗教色を失ってしまったものは、仏教徒の祝うクリスマスなど、列挙にいとまがない。

ある種のお寺もまた例外ではない。

今回は、そんな、日本で一番身近なお寺の一つ、長興寺をご紹介したい。



これが、今回紹介する長興寺仏塔である。

なんだ、信号じゃないかとおっしゃる向きもあろう。そう、これは正真正銘の「信号」だ。

しかし、信号は、元来まぎれもなくお寺の仏塔(ストゥーパ)なのだ。

そもそも「信号」という言葉は「信ずべき号(よびな)」を意味し、仏陀を婉曲的に表現したものだったのである。キリストを主と呼び、天皇の名を御名御璽とするのと、発想としては同じだ。

そして、それはやがてお寺や仏塔を指す呼称となった。さらに檀家制度によってお寺による民衆の管理が徹底していた江戸時代には、信号は「逆らえないもの」の意味で用いられるようになった。

明治政府は、人々がこれに逆らわないようにという思いを込めて、この交通整理の道具を「信号」と名づけたのである。





そして、現在においても、信号は仏塔としての形式を備えているといえる。

この茶色い箱状のものは、信号の下に位置するのが常である。そして、その箱に必ず描かれている、星型に似た紋章に注目していただきたい。

この形はまさしく「五蘊」を象徴したものである。

これによって、この箱が実は 舎利容器であることが分かるのである。


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