とある判例


要旨:原子炉の運転差し止めを認めた事例

平成14年5月21日第3小法廷決定 平成11年(行ツ)第800号事件
(原子炉設置許可処分取消訴訟事件)

       主文

 本件上告を棄却する。訴訟費用は上告人の負担とする。

       理由

1 上告理由第1の点について
 本件上告人は、甲11号〜3487号証において、本件原子炉は、何ら安全性に欠けるところはない旨、縷々主張する。
 しかしながら、原審の適法に認定した事実によれば、本件原子炉の運転にはその安全性について重大かつ外観上客観的に明白な瑕疵が存するというのである。
 この点につき職権をもって判断するに、原審の事実認定は正当なものとしてこれを是認することができ、かかる事実認定を破棄しなければ著しく正義に反するとはいえない。上告人の事実に関する主張はにわかに信じがたく、所論は採り得ない。

2 上告理由第2の点について
 また上告人はこれまでに原子炉設置許可処分が取り消された事例のないことを挙げて、判例違反を主張する。
 しかしながら、先に述べたように本件においては原子炉の安全性について、設置許可処分を取り消すに足る重大かつ外観上客観的に明白な瑕疵が存するのである。これに反する事実を前提とした所論はその前提を欠き失当である。

3 結論
 結局、所論は理由がなくこれを採ることはできない。よって、裁判官全員の一致をもって、本件上告を棄却する。

(裁判長裁判官 金田秀幸 裁判官 八千草利夫 裁判官 原本敏広 裁判官 奥野輝道)

  参考資料:上告受理申立書

 請求の趣旨

本件控訴審及び第一審を取り消し、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求める。

 理由

 本件原子炉運転許可処分を取り消し、本件原子炉の運転を差し止める旨の第一審及び控訴審の判断には、著しい違法があり破棄されるべきである。理由は次の通りである。

一 上告理由第1
 原審の事実認定には次のような重大な瑕疵があり、破棄を免れない。

1 まず、本件原子炉の安全設備に関していうと、その設備は国内の原子炉でも最高の水準にあるということができる(甲11号〜553号証参照)。このように、設備面において本件原子炉の安全性に重大な瑕疵があるとは到底いうことができない。

2 さらに、原子炉運転に携わる技師についても、週に2度の安全訓練を安全監督責任者の指導の下に行っており(甲670〜3487号証参照)、人的側面においても安全性に瑕疵があるということはできない。

3 このように、本件原子炉には物的にも人的にも何ら安全性に瑕疵は見あたらないのである。これに反する第一審及び控訴審の事実認定は破棄しなければ著しく正義に反するものと言わざるを得ない。

二 上告理由第2
 原審の判断は、先例および確立した判例に違反するものであり、この点でも破棄を免れない。

1 まず、本件と同様に原子炉設置許可処分の取り消しを求めた訴訟において、これを認容した例は下級審裁判例にも見あたらない。

2 また、実際に事故を起こし、本件原子炉よりも安全上の瑕疵の程度が大きいといわざるを得ない高速増殖炉「もんじゅ」訴訟においても、運転差し止め請求は棄却されている。本件訴訟にのみ運転差し止めを認める控訴審の判断は、上記「もんじゅ」訴訟の判例に違反しているといわざるを得ない。

三 このように、本件における控訴審の判断における瑕疵は著しく、それを取り消さなければ著しく正義に反すると信ずるので、行政事件訴訟法第7条及びその準用する民事訴訟法318条に基づき上告受理の申し立てをなすものである。

(上告代理人 鈴木和夫 同 花笠一郎 同 甲野太郎 上告人 国 参加人 関西電力原子力事業部法務課長 島田剛 同 同城之崎原発運転主任 寺島大介 同 同安全監督責任者 うっかり八兵衛)

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